会社法改正

【概要】 この度、台湾の会社法の大幅な改正が行われ、2018 年 8 月 1 日に公布されました。現在、施行日は未定となっておりますが、台湾のビジネスに関係する皆様にお知らせするため、改正内容のうち、重要な点をピックアップし、経営への考察を加えてお知らせ致します。

【台湾進出日系企業に影響のある重要な改正ポイント】

1.無額面株式制度(129 条)

⚫ 修正前 1.額面株式のみ 2.公開発行会社は 1 株 10 元

⚫ 修正後 額面株式と無額面株式のいずれかを選択可

⚫ 解説 1.公開発行会社でないこと 2.既存の株式を無額面化することも可能

⚫ 台湾進出日系企業の経営への影響 増資による資金調達や M&A 時に、1 株 10 元などの額面の枠組みに縛られずに 1 株単価を設定することができる。なお、すべての株式を無額面に変更する必要があり、定款変更などの手続きを要する。

⚫ 日本の会社法等での取り扱い 2001 年から無額面株式のみ発行できる。なお、従前の額面株式は再発行を行わないことも認められている。

2.取締役・監査役の定足数無額面株式制度(128 条之 1)

⚫ 修正前 少なくとも取締役は 3 名、監査役は 1 名

⚫ 修正後 1.取締役会を設置せず、取締役を 1 名或いは 2 名とすること可 2.1 名の法人株主の場合は、監査役を設置しないこと可能

⚫ 解説 1.公開発行ではない会社であれば、既存の進出企業も含めて修正後の新規定の適用可 2.定款に規定する 3.公開発行会社は、証券交易法の規定に従う

⚫ 台湾進出日系企業の経営への影響 株式会社では、取締役の定足数の削減でより簡易な経営組織を持ち、スピーディーな経営が可能となる。また、1 名法人株主の場合は、監査役も削減し、より簡易な組織運営が可能となる。

⚫ 日本の会社法等での取り扱い 2006 年から、日本の会社法でも、株式譲渡制限会社で取締役会を設置しない会社は、監査役を設けないことが認められている。

3.取締役会の書面決議(205 条)

⚫ 修正前 取締役会では書面決議不可

⚫ 修正後 取締役会でも書面決議可

⚫ 解説 1.公開発行ではない会社で、修正後の新規定の適用可 2.定款に規定する 3.取締役すべてが書面決議方式に同意する場合に、議案の決議を書面で実施できる

⚫ 台湾進出日系企業の経営への影響 経営陣内で対立する議題事項がない場合に、スピーディーな経営意思決定ができる。

⚫ 日本の会社法等での取り扱い 2006年から、会社定款で定めれば、取締役全員が書面又は電磁的記録により議案である提案に同意の場合に、その提案を可決した取締役会議があったものとみなすができ、書面等による決議が認められている。

4.株主提案・株主総会テレビ会議(172 条之 2)

⚫ 修正前 規定なし

⚫ 修正後 株主総会の開催方法はテレビ会議も可

⚫ 解説 公開発行会社は不適用

⚫ 台湾進出日系企業の経営への影響 従来、取締役会のみに認められていたテレビ会議形態での開催が、株主総会にも認められることにより、開催場所や日時を柔軟に決定することが可能となる。今後、テレビ会議の利用により、時間の節約、出張などの経費の節約が期待できる。

⚫ 日本の会社法等での取り扱い 2006 年より「株主総会が開催された日時及び場所」として、当該場所に存しない取締役、執行役、会計参与、監査役、会計監査人又は株主が株主総会に出席をした場合における当該出席の方法を含むという注記が入り、当該場所にいなくても出席を認めている。

5.株主への配当回数(228 条之 1)

⚫ 修正前 毎会計年度に 1 回の利益処分或いは損失填補

⚫ 修正後 1.毎半期或いは毎四半期に配当或いは欠損填補可 2.配当案について監査役の監査を受ける。 3.現金配当の場合は、取締役会の決議を経ればよい。

⚫ 解説 1.定款の規定 2.現金による配当の場合、取締役会の決議で可能。新株発行の方法の場合は、株主総会の決議 3.財務諸表は、監査役の監査を受けた後に取締役会で決議 4.法人税の見積の他、欠損填補、利益準備金の繰り入れ後の配当可能利益の算定が必要 5.公開発行会社の場合、会計士の監査・レビューを受けた財務諸表を用いる

⚫ 台湾進出日系企業の経営への影響 日本親会社の要求に応じた柔軟な配当政策が可能となる。

他方、毎四半期、半期に本決算に準じる業務が必要となり、事務管理の負担が増える。

⚫ 日本の会社法等での取り扱い 従来は年度と中間の最大 2 回であった配当の回数制限が、2006 年より廃止されており、分配可能額の範囲内で配当を行う限り、年度内にいつでも何回でも、必要な手続を経ることによって、剰余金の配当を行うことができる。

6.英語社名の開放(392 条之 1)

⚫ 修正前 規定なし

⚫ 修正後 英語名称の登記可

⚫ 解説 1.会社名は、中国語名とともに、英語名も登記できる。 2.定款にも要記載 3.既存会社の場合、基本的には貿易登録上の英語名称が用いられる。 4.インターネットで、英語名称も公開

⚫ 台湾進出日系企業の経営への影響 英語名称が正式に登記されることで、英文名での各種申請が促進されると思われる。なお、依然として中国語名称の登記も必要であるため、新規進出の際には中国語の名称も準備しなければならない。また、各主務機関や銀行などの民間企業への登録上、重複のチェックや中国語と英語のどちらを使用するかなど運用上の課題も残る。

⚫ 日本の会社法等での取り扱い 2002 年から社名にローマ字やアラビア数字の表記も認められ、例えば「ABC 株式会社」と法人登記することができる。

ただし、株式会社部分を「K.K.」,「Company Incorporated」に変えることはできない。

7.マネーロンダリング規制の徹底(22 条之 1)

⚫ 修正前 規定なし

⚫ 修正後 毎年或いは変更の都度、以下の情報を主務機関に電子方式で申請する。

対象:取締役、監査役、総経理、10%を超える株主開示項目:国籍・生年月日・身分証明書・設立登記日・持株数・出資額等

⚫ 解説 2018 年 11 月~2019 年 1 月(末まで)に初回会社登録及び初年度申告を行う。その後、2020 年 3 月から毎年 3 月中に変更の有無の定期申告を行う。なお、情報が変更となった場合は、当該変更から 15 日以内の申告を行う。無申告の罰金は台湾ドル 5 万元から。

⚫ 台湾進出日系企業の経営への影響 役員や株主の情報を定期かつ変更の都度、届け出を行うため、事務管理コストの負担が増す。

⚫ 日本の会社法等での取り扱い 同様の運用は行われていないが、株主に関しては、2016 年より商業登記規則に基づき法人登記時に株主リストの登記を求められる場合ある。

8.財務諸表監査(20 条)

⚫ 修正前 資本額が一定の額に達する場合(現状、台湾ドル 3,000 万元)

⚫ 修正後 資本額に加えて、一定の経営規模が一定の基準に達する場合

(現状、売上高台湾ドル 1 億元、従業員数 100 名)

⚫ 解説 2019 年度については、資本金 3,000 万元、売上高台湾ドル 1 億元、従業員 100名(年度末の保険加入者人数で判定)の何れかの基準を満たす場合に、財務諸表監査を行う必要がある。

⚫ 台湾進出日系企業の経営への影響 財務諸表監査対象会社の範囲が拡大する。2019 年度の監査に備えて、2018 年度期末(2019 年度期初)の資産の棚卸(棚卸資産や固定資産等)が必要になる。

⚫ 日本の会社法等での取り扱い 大会社(資本金 5 億円以上又は負債の部 200 億円以上)の場合、或いは監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社の場合に会計監査人による監査が行われる。